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弁護士法人心 越谷法律事務所

介護の寄与分を主張したい場合の証拠について

  • 文責:所長 弁護士 岡田大
  • 最終更新日:2025年7月30日

1 被相続人介護当時の病状が分かるもの

介護を寄与分として認められるためには、その介護が被相続人とその介護を行った人(寄与分主張者)との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える「特別な」寄与である必要があります。

そのため、特に介護が必要ないあるいは、負担の小さい介護で問題ない場合などの介護は寄与として認められないケースがあります。

そのため、寄与分主張者は、被相続人に介護が必要で合ったことが分かる資料として、「診断書」「カルテの写し」「死亡診断書」「介護記録」などを準備する必要があります。

また、介護が必要であったことを示す資料として、通院していたことを示す「領収書」なども証拠になる場合があります。

2 介護を行うに至った事情等が分かるもの

1のとおり、介護を寄与分として認められるためには、その身分関係に基づいて通常期待される程度を超えた介護が必要となります。

そのため、特に被相続人側から要請があったことが分かる「手紙」や「メモ」、専門家に依頼するのではなく、あえて今回の介護の支援をする必要があったことが分かる資料などがあれば、それらについても、介護の寄与分を認められるうえで、必要な証拠になる場合があります。

3 介護時期が分かるもの

介護が寄与分として認められるためには、その介護の期間が相当程度長期間に及んでいることが必要となる場合があります。

過去の事例を見ても具体的な基準があるわけではありませんが、おおむね1年以上継続した介護を行っている場合に、介護の寄与分は認められる場合が多くなります。

そのための証拠としては、介護の期間が分かる介護の日誌等が有効な証拠になる場合があります。

4 介護内容が分かるもの

介護を寄与分として認める上で、特別な介護を行う必要がある以上、それなりに負担のある介護を行っている必要があります。

そのため、片手間で済むような介護などは認められない(通院の付添程度で認められることは限定的となる。)ことが多いです。

ただし、それ以外のことができないような「専業」や「専念」といったことまで求められることも少ないです。

こうした介護内容は家庭内で行われる以上第三者からは見えないことが多く、証拠の収集が難しいところになりがちです。

この点の証拠としては、「介護記録」や事後的な「陳述書」といったもので証拠化し、事後的な精査等からその信用性を調査していくことになります。

その他にも、被相続人の状態を把握することで、その維持は家庭内で行われた介護のたまものと主張することもあります。

そのため、当時の写真や日記、家計簿等の生活状況が分かる資料もこの点の証拠となる場合があります。

5 介護の被相続人財産への影響、介護保険制度利用の有無

介護が寄与分として認められるのは、その介護により被相続人の財産が維持又は増加したことへの清算という側面を持ちます(単に精神的援助では認められない場合があります)。

そのため、被相続人の財産状況について分かる資料も有効な証拠となります。

また、元来介護を家族が行えば支出が当然に減ったと主張できていたものが、介護保険制度により要介護度の支給限度額を超えて介護サービスを得ていた場合などは、介護者の負担が軽減されたと主張されることも生じており、介護保険制度利用状況についても確認が必要となってきています。

加えて、介護が寄与分として認められるためには、介護について無報酬あるいはこれに近い状況(無償性)が必要です。

報酬については、金銭に限られませんので、何らかの物品が渡されるなどしていれば、無償性要件を満たさない場合があります。

例えば、寄与分主張者が被相続人と同居し、その家賃や生活費の負担を被相続人が負っていたなどの場合は、その分無償性について認められない場合があります。

そのため、被相続人だけでなく寄与分主張者の生活状況がわかる家計簿等の資料も有効な資料になりますし、仮に寄与分主張者が被相続人から生活費をもらっていたとしても、被相続人のために使われる生活費を超えて受け取っていないと示せるような「標準生活費」などの資料も寄与分を主張する上で有効な証拠となります。

参考リンク:総務省統計局・家計調査(家計収支編)

6 被相続人が必要とした具体的介護

被相続人の状態からみて必要な介護を把握し、実際に行った介護(上記4)が「特別な」介護といえるかを判断する必要があります(おおむね、被相続人が「要介護度2」以上の状態であることが必要となれる場合が多い。)。

そのため、被相続人が要介護認定を受けていた場合は、認定された要介護と認定時期を確認することができる認定資料は重要な証拠となります。

仮に、そのような要介護度の認定を受けていなかった場合には、被相続人の病状が分かる資料や人の証言を証拠とすることが重要です。

7 具体的介護の報酬相当額が分かる資料

寄与分を主張する場合は、その介護が具体的にどれくらいの金銭的寄与を被相続人に与えたのかが分かる資料を寄与分主張者側で準備する必要があります。

その際に必要となる資料としましては、「介護保険制度における介護報酬基準額」「職業的介護サービスの費用」または、寄与分主張者が実際に介護料を負担している場合は、その領収書などが証拠となります。

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